はじめに
太陽や月にかかる暈現象や虹といった大気光象、大気光学現象を日々観察しています。
基本的に新潟市での観察ですが、出かけた先でも、飛行機からでも観察しています。
最も観察されることが多い 22°ハロは、年間 100 日以上出現します(ただし、「はっきりとした綺麗なもの」はそこまで多くありませんが)から、
日常生活の中で時々空を見上げていれば、美しい大気光象に出会えることも多いでしょう。
美しい大気光象
観察を続けているうちに、かなり薄い現象でも「出現していれば」目視で観察できるようになります。
観察(出現)されたかどうか記録を付ける場合は目視確認が大切です。
とりあえず撮影して強調処理やシミュレート画像比較して”見えました”は、いろいろな間違いのもとになりますから注意しましょう。
目視で見えるものは写真に写せる、しかし見えていないものも写真には写ってしまうことがあるのです。
本ページでは、アンシャープマスク等の強調処理をおこなった画像、シミュレート画像との比較及び合成画像を多用しています。
これらの手法は大気光学現象がどのような位置にどんな形で出現するのかを勉強するのに役立ちます。
- 観察頻度については、私の観察記録によります。
- 研究成果ではなく単なる観察結果(自分なりの解釈)です。正しい解釈等は大気光学現象の文献をお調べください。
- 不勉強で、名称や説明に勘違いしているところがあると思います。間違いを指摘いただけると嬉しいです。
- 写真を引用する場合はメールにて連絡をください。
・別館 WHITE ICE
大気光象の動画集です。日の出前から日没後までの全天動画、大気光象のピックアップ動画、および実験動画です。
参考サイト
・天空博物館 http://www.asahi-net.or.jp/~cg1y-aytk/ao/index.html
綾塚さんのホームページ。大気光学光象の科学的な解説がしっかりとされているページ。
虹の色の順番の正しい解釈のスライドなどもあり、大気光学現象を勉強するのにおすすめです。
・Atmospheric Optics http://www.atoptics.co.uk/
海外サイト。様々な大気光学光象の解説・写真が豊富。とても美しい光象、珍しい光象、および研究結果がものすごいです。大気光学現象のシミュレーションソフト「halo sim」があります。
・大阪市とその周辺の蝶 http://butterflyandsky.fan.coocan.jp/index.html
輝さんのホームページ。空の輝きのページに大気光学現象の詳細な解説、写真があります。
観察の注意事項
太陽にかかる大気光学現象は、太陽のそばに見られるものがたくさんあります。
太陽を肉眼で直接見ることは目を傷める原因になります。
※とにかく太陽を直接見ない→建物の日陰に入ってから、太陽が見えない範囲で移動しながら観察する。
※サングラスや色下敷きなどでの遮光はアウト→赤外線、紫外線カットが十分で無ければ、直接見るのと変わりがない。まぶしくなくても安全な光ではないことに注意する。日陰からの観察が一番。
※カメラのファインダー(特に光学ファインダー)で、太陽方向を見るのはアウト。→標準〜望遠レンズは一瞬でもだめ。
広角〜超広角レンズでなら短時間のぞけますが、安全ではありません。
液晶画面であれば目は大丈夫ですが、カメラにとって安全ということはありません。
私は、何度も観察写真を撮りながら、「自己責任で」「大丈夫と判断できる範囲」で、日陰ではないところからも観察と撮影をしています。街灯や木などの小さな日陰に入って観察するときもありますが、光の効果を狙って太陽が直接見えるような撮影もします。
氷晶がつくる大気光象のはなし
光象の形・見え方
大気光象の形は、22°ハロ・46°以外、太陽高度によって形もしくは大きさが変わります。
夏至の新潟市の太陽経路で、様々な大気光象をシミュレートした動画
氷晶の形と姿勢
六角柱氷晶
空高くにある巻雲や巻層雲などは小さな氷の粒「氷晶」でできています。
氷晶は透明な六角柱の形をしていて、ここに光が当たるとプリズムや鏡として働き、光を屈折させたり反射したりします。
六角柱の氷晶は大きく分けて、板状と柱状の2種の形をとります。
板状氷晶は柱が伸びず、六角形の板のような形をしています。
柱状氷晶は柱が伸び、細長い鉛筆のような形をしています。
注:このページでは、雪結晶の分類名をもとに氷晶を「板状氷晶」「柱状氷晶」と呼んでいます。
大気光学現象の書籍、論文ではプレート氷晶、鉛筆型氷晶と呼ぶとのことです。
板状氷晶(左)と柱状氷晶(右)
中心をとおる軸が c 軸。
板状氷晶は c 軸を中心に自由に回転できる( c 軸が垂直という向きの姿勢なら同じように取り得るという意味。
個々の氷晶が常にくるくる回っているわけではない)。柱状氷晶は c 軸回転に加えて鉛直方向を中心に回転できる。
空に浮かぶ氷晶は、なるべく安定した姿勢をとろうとします。気流が安定しているとき、
板状氷晶は六角形の面(底面、基底面などと呼ばれます)が水平になるように浮かびます。
柱状氷晶は六角形の面を垂直になるように浮かびます。
六角形の面と直行する軸(六角柱の中心軸)をc軸と呼びますが、
c軸で説明すると、板状氷晶はc軸を垂直になるように、柱状氷晶はc軸を水平になるように浮かぶのが安定します。
気流が不安定だと c 軸の向きが揺れるようになり、気流がある程度以上乱れると、c軸の向きが無秩序(ランダム)になります。
どちらの氷晶も、c 軸を中心とした回転はほぼ同じ安定姿勢なのですが、きわめて気流が穏やかなときは、
柱状氷晶では四角面(柱面とも呼ばれます)を水平にして浮かぶことがあります。
氷晶による屈折(氷晶はプリズム)
氷晶は、主に 60°・90°のプリズムとして働きます。
右図は氷晶がプリズムとして働くときの光の進み方を示しています。
太陽光線(オレンジ)が氷晶にあたると一部の光が普氷晶内部へ進み(青の破線)、屈折して目に届きます(黄)。
すると人間の目には、光がやってくる方向(水色の破線、☆の位置)が明るくなって見えます。
60度のプリズム
90度のプリズム
90度のプリズムの方が60度のプリズムよりも大きく光を屈折するので、より太陽よりも遠いところが光ります。
氷晶がいろいろな姿勢を取ると、それぞれの氷晶の明るくなるところがつながって、いろいろな形状の光の線が見えるようになります。
さらに、氷晶の表面や内部で反射する光もあります。反射と屈折が組み合わさることで、実に多くの大気光象がみられます。
氷晶の形・姿勢・光の経路と大気光象
氷晶が主にプリズムとして働いて見えるもの
C軸の向き(垂直、水平、ランダム)と光の経路(60°プリズム、90°プリズム)の組み合わせで、以下のような大気光象が出現することがあります。
これらの大気光象はパリ—アーク、パリ—ラテラルアーク、46°ハロ以外は比較的目にすることが多いです。
プリズム(光の経路) |
60°プリズム(柱面⇔柱面) |
90°プリズム(柱面⇔底面) |
氷晶の形\太陽高度 |
高い | 低い | 高い | 低い |
板状氷晶 c軸垂直 |
- | 幻日 | 環水平アーク | 環天頂アーク |
柱状氷晶 c軸水平 |
外接ハロ | 上部タンジェントアーク 下部タンジェントアーク | 下部ラテラルアーク | 上部ラテラルアーク 下部ラテラルアーク |
柱状氷晶 柱面水平 | パリーアーク | パリーラテラルアーク |
板状氷晶・柱状氷晶 c軸ランダム |
22°ハロ | 46°ハロ |
※氷晶の平行な 2 面の内面で反射し、内面反射がない場合と同じ方向に進む光もあります。
氷晶が主に鏡として働いて見えるもの
C軸の向き(垂直、水平)により、以下のような大気光象が出現することがあります。
氷晶の形\太陽高度 |
高い | 低い |
板状氷晶 c軸垂直 |
幻日環 映日 | 太陽柱 幻日環 |
柱状氷晶 c軸水平 |
幻日環 | 太陽柱 幻日環 |
※氷晶の内部に入る光にも、表面反射のみの場合と同じ方向に進むものがあり、光象に加わることがあります。
氷晶で光が屈折と反射することで見えるもの
氷晶内に屈折して入り、少なくとも1回内部で反射した光が見せるもの。珍しいものが多いです。
氷晶の形\太陽高度 |
高い |
低い |
板状氷晶 c軸垂直 |
120°幻日・幻日環 映日・映幻日 |
柱状氷晶 c軸水平 |
ウェーゲナーアーク 幻日環 |
ウェーゲナーアーク 太陽柱・幻日環 |
※上記 3 つの表について・・・光の経路をシミュレートしてみると、
計算上は氷晶内部で何度も反射した光が眼に届き、光象を見せる可能性があります。
ただ、空に浮かぶ氷晶は完璧な六角柱とは限らず、凸凹(骸晶構造)や中に空洞を持つものがあるので、そう単純ではありません。
氷晶内部での反射回数ごとに光を区別して、太陽高度 25 度の時の光象をシミュレートしたのが右図です
(各画像中心が天頂)。主にプリズムとして働いて見えるものは、おおむね"屈折のみ"の光で作られています。
幻日環は表面反射だけでなく、1・3・5回反射した光も混ざっていることがわかります。
太陽高度が変わると、何回反射した光が明るく見えるか変わるので、どの光象をどの経路を通った光が作るかを一言で言い表すことができません。
氷晶の形と姿勢の異なる 4 種類の氷晶によるシミュレート動画。様々な経路をたどった光が集まり、太陽高度変化に伴って形が変わる光象を作り出しています。
複雑とはいえ眺めているうちに、なんとなく変化の法則が見えてきます。
左のシミュレートを氷晶ごとに色分けした動画。
赤:板状氷晶( c 軸鉛直方向)
青:柱状氷晶(鉛筆状氷晶)( c 軸水平方向)
黄:ランダムな姿勢となる(六角柱)氷晶( c 軸の向きはランダム)
緑:柱状氷晶(鉛筆状氷晶)(柱面水平方向)
「レアな虹?」
web 上で、また時々メディア上で、ハロ現象を「珍しい現象が○○で見られました」という表現で紹介されることがあります。
珍しいというのは、どの程度の頻度で見られるものを指しているのでしょう? 相対的な表現なのでよくわかりません。
年間観察日数( 2011~2019 )
上のグラフは、私の約 10 年間の観察記録から、観察された回数(日数)を年平均で示したものです。皆さんは、どのくらいの回数なら「珍しい現象」だと思いますか?
私は、年に 10 回に満たなければ珍しい現象、年に 1~2 回程度以下なら「なかなか見られない現象」という感覚です。太陽柱、幻日環、外接ハロは珍しい現象で、46°ハロ以下はなかなか見られない現象になるでしょうか。
比較的よく観察される光象
比較的珍しい光象
上のグラフは、月ごとに観察された回数(日数)を示したものです。左のグラフは年間 10 回以上観察された光象を、右のグラフは年間 10 回よりは少ない回数しか観察されなかった光象です。
それぞれ観察されやすい季節、ほとんど観察されない(全く観察できない)季節があります。対象とする期間を限定すると珍しい現象といえるものが変わりますね。
「環水平アークがみられた!激レア現象だ」という紹介があったとします。あまり空を見ない方が初めて見たのであれば、その方にとっては珍しい現象でしょう。しかし、いつも空を見る方にとってはそこまで珍しい現象ではないので、ちゃんと観察していないな、とか、ちゃんと調べていないな、と思われてしまいます。
しかし、「 4 月に珍しい環水平アークをみた」なら納得です。情報発信するときは誤解されないよう根拠をもってして欲しいですね。
氷晶による大気光象
※写真はクリックで拡大します。また、黄枠の写真はクリックで強調画像等に切り替わります。拡大するときは画像近くのリンクをクリックしてください。
60°プリズム
■c軸ランダム■
22°ハロ
22°halo
100 回/年以上
太陽を中心とした半径約 22 度の正円の光象。季節・時刻を問わず観察できるチャンスがあり、最も出現数が多い光象です。内側から外側に向かって赤−黄−白に色づいて見えることがあります。
自分の観察記録では平均 3~4 日に 1 回見られています。一週間毎日観察されたこともあります。しかしながら、明るくはっきりしたものとなるとそれほど多くはありません。
巻層雲が厚すぎると光が拡散しすぎるためにぼんやりとした 22°ハロになります。
22°ハロの大きさ(半径)は、腕を伸ばして広げた親指と人差し指の間の長さ位です。
写真 1 枚に収めるには、焦点距離 28 mm より広角なレンズ(カメラ)が必要です。
←22°ハロの 360°画像(別窓で開きます[google photo])。半径が22度ということは、
直径が地平線から天頂までの半分になると考えれば、その大きさを実感できるのではないでしょうか。
飛行機からの眺め。地平線/水平線下にも氷晶が浮いていれば、22°ハロは地平線/水平線下にも出現します。
右写真の撮影時の太陽高度は約 8 度で、22°ハロの半分近くは水平方向より下になっています。
飛行機が薄い氷晶雲と同じ高度(もしくは氷晶雲の中)を飛行していないとみられません。
全天カメラで撮影したように射影変換した 22°ハロ。
飛行機から見た 22°ハロの立体視画像(交差法)。視差が太陽と同じなので無限遠にあるように見えます。
林の隙間と22°ハロ。かなり大きく空が開いていないとハロの全体は見られません。
外接ハロとのマルチディスプレイ。真円の 22°ハロに楕円の外接ハロが重なっています。
下部ラテラルアークも見えています。
22°ハロのシミュレート。内側がわずかに赤色に色つきます。
月の22°ハロ
20 回/年
月にかかる 22°ハロは平均するとひと月に 1〜2 回観察されます。
満月のころはかなり明るく見えますが、上弦前や下弦後だとかなり薄くしか見えません。
月暈を撮るときは、星を撮るときと同じくらいか少し短めの露光時間です。
星と一緒に写せるのが月の大気光象の面白いところです。
長時間露出のため飛行機雲が巨大彗星のように見えます。
小雪が舞う夜に見られた月の 22°ハロ。とても幻想的でした。フラッシュ+長時間露光で撮影しています。
「手にオーラ集中」
「某・必殺技」
360°画像。合成用の写真を撮影している間に雲が流れてしまうのですが、一様な巻層雲ならうまく撮影できます。
この 2 事例の撮影日は別です。
■c軸水平■
UTA→
上部タンジェントアーク
Upper Tangent Arc,UTA
20 回/年
22°ハロの上方に接する弧。太陽高度によって形が変わるのが特徴で、太陽高度が高い時は太陽に対し凹、低い時は凸となります。
季節・時刻を問わずみられるチャンスがあります。
上部タンジェントアークがはっきりと見えるときは、右の写真のよう幻日環が見られたり、
ラテラルアークや太陽柱など複数の大気光象が見られることがあります。
太陽に対して凹の上部タンジェントアーク。右の写真では幻日と幻日環も見えています。
日没前に見られた V 字型の上部タンジェントアーク。太陽柱が一緒に見えています。
太陽高度約 1 度のときに見られた V 字型の上部タンジェントアーク。
左半分はシミュレート。V 字型が綺麗に見えています。
上部タンジェントアークの拡大。うっすら見える上に凸の弧は22°ハロ。
太陽高度約 40°のときに見られた上部タンジェントアーク。
右上 1/4 はシミュレートによるもの。太陽に覆いかぶさるようなアークになります。
※太陽高度が 40°の場合、条件が良ければ下部タンジェントアークとつながり外接ハロとなります。
月の上部タンジェントアーク
2 回/年
月のタンジェントアークは、雲の濃淡と見分けるのが少し難しいです。しかし、太陽の方で形をしっかりと覚えれば上部タンジェントアークなら明るいので見つけられるでしょう。
右の写真は太陽に対して凸の上部タンジェントアークで、薄い22°ハロと月柱も一緒に見えています。
22°ハロと月に対し凹の上部タンジェントアーク。右は強調画像。
LTA→
UTA→
下部タンジェントアーク
Lower Tangent Arc,LTA
7 回/年
22°ハロの下方に接する弧。太陽高度が高い時は太陽に対し凹、低い時は凸となります。上部タンジェントアークが一緒に見えることが多いです。
地上からでは太陽高度 30°程度より低いとまず見えないので、上部タンジェントアークより観察される頻度は少なくなります。
また、下部タンジェントアークは地平線に近くにあるために、光が氷晶雲を通る距離が長くなるとともに低い空の濁った空気も通るので、拡散や減衰を受けやすく、上部タンジェントアークと比べると明るく鮮やかに見えることはそれほど多くありません。
飛行機から見た下部タンジェントアーク。翼のすぐ上、太陽に凸(∧形)のアークが下部タンジェントアークで、下部ラテラルアーク、22°ハロ、幻日も一緒に見られます。
太陽高度約 31°のときに見られた下部タンジェントアーク。地上近くで明るく輝いて見えた珍しいケースです。
↑飛行機からみた下部タンジェントアーク(翼のすぐ下)。太陽高度は約 19°なので地上からでは地平線の下です。
(通常画像)
(強調画像)
魚眼レンズで撮影した 22°ハロ、上部タンジェントアーク、下部タンジェントアーク、そしてうっすらと下部ラテラルアーク。
うっすらと下部タンジェントアーク。この太陽高度では上部タンジェントアークとつながって外接ハロになる場合があります。
←太陽高度約 12°の時の下部タンジェントアーク。地上からは地平線下になり見えませんが、氷晶雲が分布する高度範囲を飛行機が飛べば、地平線下の光象を観察できます。
(通常画像)
(強調画像)
下の画像は交差法による3D写真です。太陽と視差が同じ光象は無限遠となるので、地上を埋め尽くす雪雲の向こうに透けているように見えます。
月の下部タンジェントアーク
1 回/年
月の高度がそこそこ高いときに見られる現象なので、0 時ころまでの観察時間ではなかなか観察のチャンスがありません。
外接ハロ
Circumscribed halo,CH
4 回/年
太陽高度が30°程度よりも高くなると、上部タンジェントアークと下部タンジェントアークがつながって見える場合があり、さらに太陽が高く上ると完全につながり太陽を中心とする楕円形=外接ハロとなります。太陽の上下で 22°ハロと外側から接し、太陽高度が高くなるほど正円に近づいていきます。
太陽高度が 60°位を超えるとほとんど 22 °ハロと重なり、区別が難しくなります。
22°ハロと一緒に見えることが多いようです。外接ハロが明瞭に見えるときは、下部ラテラルアークも見えている可能性があります。
外接ハロと22°ハロのマルチディスプレイ。外側の楕円が外接ハロ、内側の正円が22°ハロ。両ハロがきれいに出現すると、空に浮かぶ巨大な目のようです。
鮮やかな外接ハロ。22°ハロと同じく、内側は赤っぽく外側は青っぽく色付きます。22°ハロもわずかに見えています。
太陽高度約 57°の時の外接ハロと22°ハロ。太陽がこのくらいの高度に上ると外接ハロはかなり円形に近づき、22°ハロとほとんど重なっているように見えます。
通常画像・
強調画像
外接ハロの 360°画像(別窓で開きます[google photo]。非常に鮮やかに見られた外接ハロで、22°ハロ、幻日環、下部ラテラルアークも一緒に見えています。
シミュレートによる外接ハロと 22°ハロの再現。外接ハロがぼんやりと見えている状況だと 22°ハロとの区別がかなり難しいです。
22°ハロ、幻日環とのマルチディスプレイ。
22°ハロ、幻日および薄い幻日環とのマルチディスプレイ。
非常にはっきりとした外接ハロ。よく見ると 22°ハロも確認できます。
月の外接ハロ
1 回/年 以下
月の外接ハロはかなり珍しいです。右の写真の例では 22°ハロと一緒に出現しています。
←外接ハロと 22°ハロ。タップ・マウスオンで強調画像になります。
(通常画像)
(強調画像)
■柱面水平■
パリーアーク
Parry Arc,PA
1〜2 回/年
比較的珍しい現象です。氷晶に対する光の経路から 4 種類(上部・下部、それぞれに太陽に対し凸(sunvex)・凹(suncave))あり、太陽に対し凹の上部パリ―アークが見つけやすい(自分統計)です。
右の写真は太陽に対し凹の上部パリ―アーク(PA)です。
※パリーアークが見える太陽高度範囲(※単純な計算上)
太陽に対し凸・上部:17°以下
太陽に対し凹・上部:77°以下
太陽に対し凸・下部:23〜60°
太陽に対し凹・下部:25°以上
太陽に対し凹の上部パリーアーク。パリーアークが見られるときは、他にも大気光象が見られることが多いです。これは上部タンジェントアーク、幻日とのマルチディスプレイ。
通常画像・
強調&シミュレート画像。
パリーアークと様々な光象のマルチディスプレイ(強調画像)。クリックでシミュレート画像との合成表示。
PA:パリーアーク(上部、太陽に対し凹)、22°:22°ハロ、LTA:上部タンジェントアーク、CZA:環天頂アーク、SLA:上部ラテラルアーク。
通常画像・
強調&シミュレート画像。
太陽に対し凹の上部パリ—アークと、22°ハロ、幻日、上部タンジェントアーク、上部ラテラルアークのマルチディスプレイ。
通常画像・
強調&シミュレート画像。
強調画像とシミュレート画像。PA:上部パリ—アーク、22°:22°ハロ、PH:幻日、UTA:上部タンジェントアーク、SLA:上部ラテラルアーク
22°ハロ・幻日・上部タンジェントアーク・パリ—アークのマルチディスプレイ。
←の強調画像。太陽高度約 29°。太陽に向かって凸の上部タンジェントアーク(V字型)にかぶさるような、太陽に対し凹のパリ—アークが見えます。
パリ—アーク付近を拡大したもの。左半分はシミュレート画像。上部タンジェントアークと端の方で接しているのがわかります。
太陽に対して凸の上部パリ―アーク。上部タンジェントアークと一緒に見えていて、「≫」のように並んでいます。
非常にわかりにくいですが、22°ハロ、外接ハロ、上部パリーアークと共に見えた下部パリ—アーク(太陽に対し凹)。
上部パリーアークが見えていたので下部もあるかもと注視したのですが、下部タンジェントと 22°ハロが接する場所が太く見えるという感じでした。
強調画像。太陽側が赤色になった 22°ハロ、外接ハロ、下部パリーアークを確認できます。
月のパリーアーク
1 回/年 以下
パリーアークが珍しい現象なので、月のものとなるとかなりのレア現象となります。
クリックで強調画像。幻月(PH)、22°ハロ(22°)、上部タンジェントアーク(UTA)とのマルチディスプレイ。
通常画像・
強調&シミュレート画像。
■c軸垂直■
幻日
Parhelia
45 回/年
太陽高度がおおむね 60°より低い時に、太陽の両側に見える点状の光。
太陽と同じ高度で、22°ハロよりも少し離れた場所に出現します。太陽高度が高くなるほど 22°ハロから離れるようになります。
22°ハロの次に多く観察できますが、太陽と見間違うような明るい幻日はかなり珍しいです。
条件によっては綺麗な虹色が付き、太陽から離れる方向に尾を引くように見えることがあります。
太陽高度が低い時は 22°ハロとほぼ重なる位置に見えます。
(22°ハロ・上部タンジェントアーク・太陽柱とのマルチディスプレイ)
太陽高度が高いと、22°ハロから離れた位置に出ます。22°ハロとのマルチディスプレイ。
綺麗に分光した幻日。太陽高度が低いほど幻日は明るくなりやすく、虹色も分かりやすい傾向があります。
幻日は太陽の両側に見られる現象ですが、揃って綺麗に見えることはそれほど多くありません。
非常に明るく見えた幻日。板状の氷晶が安定して浮いているほど、シャープで明るく、鮮やかな幻日になります。
太陽高度が高いときの幻日の360°画像(別窓で開きますgoogle photo)。22°ハロ、幻日環も見えています。
穴あき雲(fallstreak hole, hole punch cloud)の尾流雲に出現した幻日。
穴あき雲は、水滴でできた雲(この写真では高積雲)が何らかのきっかけで凍結し、
氷晶になり落下するときに見られるもので、もともと雲だったところは穴が開いたようになル所からそう呼ばれています。
落下する氷晶は姿勢が安定しているようで、幻日や環天頂アークなどの大気光象が見られることがあります。
雲の動きを利用した疑似的な 3D 写真。交差法。雲の動きに影響されない幻日は、無限遠にあるように見えます。
←幻日の近くを通過したヘリコプター。ただし、ヘリコプターは幻日のずっと手前を飛んでいます。
日没時に見られた幻日です。太陽は右側にあります。太陽との位置関係と色合いに注意して見ないと、彩雲と間違うかもしれません。
飛行機雲にできた幻日。飛行機雲が氷晶雲となって幻日などの大気光象を見せることがたまにあり、
飛行機雲ができる日は観察のチャンスでもあります。
アクリルの六角柱をプリズムにした、幻日の再現実験の様子。右手(写真左側)の右上方向に本物の幻日が見えています。
アクリルの方が氷よりも屈折率が高いので、幻日は離れた位置にできます。
月の幻日…「幻月」
1 回/年
月で見られる幻日現象は幻月と呼ばれます。右の写真では、22°ハロ、上部タンジェントアークと一緒に見えています。
春の幻月。22°ハロと幻月のマルチディスプレイで、22°ハロを取り囲むように春の大曲線(北斗七星~アークトゥルス~スピカが見えています。
大曲線の星々が幻月の明るさの目安になると思います(もちろん、これよりも明るいときも暗いときもあります)。
90°プリズム
■c軸ランダム■
46°→
22°→
魚眼レンズで撮影。明るい 22°ハロと同心円で大きな薄い円が 46°ハロ。
46°ハロ
46°halo
1〜2 回/年
太陽を中心とした大きな光の環で、22°ハロと同心円となります。非常に大きな円なので、その姿を収めるには魚眼レンズが必要です。
非常に薄くしか見られない上、ラテラルアークとの区別が難しいです。はっきりと 46°ハロとわかるものは非常に珍しいです。
46°ハロがわかりにくい理由は・・・
・ラテラルアークとの区別が難しい
柱状氷晶が c 軸水平からかなり不安定に浮いている場合にみえるラテラルアークと区別が困難です。
・環天頂アークや幻日が見えているときに 似ているアークが見えることがある
板状氷晶が c 軸鉛直からかなり不安定に浮いている場合、環天頂アークとつながるようなアークが見えることがあります。
氷晶の浮きかたにc軸水平—c軸ランダム—c軸垂直の間で境界はない(連続的に変化できる)ので、ラテラルアークと 46°ハロの中間的なハロ現象があり得ます。
上の 2 枚はほぼ 46°ハロとみられるものです。一緒に見えているものが 22°ハロのみで、綺麗に同心円となっています。
(クリックで強調、シミュレート画像)
通常画像・
強調画像
この例は観察時の太陽高度から 46°ハロと考えられるものです。肉眼ではかなりぼんやりとしていて、色はほとんどわからないです。クッキリと色が見える 22°ハロとは対照的です。
タンジェントアーク(もしくは外接ハロ)が見られないこと、太陽高度は 50°あり上部ラテラルアークはかなり氷晶が揺れていたとしても出現できないことが判断材料となります。
(クリックでシミュレート画像)
通常画像・
強調画像
この例はわずかに幻日と環天頂アークが見えていますが、環天頂アークと離れていることと、22°ハロがはっきりとしていることから、46°ハロとみられます。
板状氷晶が不安定に浮いているときに見える 46°ハロのようなものも一緒になっていると思われます。
(クリックでシミュレート画像)
上の 3 枚は同一の写真で、柱状氷晶がかなり不安定に浮いている時の上部ラテラルアークにも、46°ハロにも見えるものの例です。
月の46°ハロ
数年に 1 回
太陽の 46°ハロでさえ薄くて見つけにくい現象なので、月の 46°ハロとなると目視で見つけるのは大変むずかしいです。
右の写真は目視できた唯一の事例です。22°ハロがはっきりと見えたときに 46°ハロ付近を注視すると、そこに明るさのジャンプがありました。
淡いですが巻層雲の流れの向きとは異なる形で、雲の流れに乗っていないことを目視で確認。念のため時間をおいて撮影し動画にして確認しました。
■c軸水平■
環天頂アーク(太陽に対して凸の虹色の弧)に接する、太陽を取り囲む大きな弧が上部ラテラルアーク
上部ラテラルアーク
Supralateral arc,SLA
9 回/年
太陽の上半分を取り囲むような大きな弧です。条件が良いと綺麗な虹色が付き、内側が赤となります。
上部タンジェントアークがはっきりと見えているとき、その外側に注目すると見えていることがあります。
右の写真で太陽を囲む大きな虹色が上部ラテラルアーク。中央上部の上に反っている鮮やかな虹色は環天頂アーク。
上部ラテラルアークと環天頂アークが両方見えるときは、お互い接して出現します。
46°ハロとそっくりに見えることがありますが、46°ハロの方は虹色がほとんどが見えません。
←クリックで強調&シミュレート画像(パリーアークの項の写真と同一)。SLA:上部ラテラルアーク、22°:22°ハロ、PH:幻日、UTA:上部タンジェントアーク、PA:パリーアーク。
通常画像・
強調画像&シミュレート画像
太陽を取り囲む二重のリングのように見える上部ラテラルアーク。22°ハロ、幻日、上部タンジェントアーク、環天頂アークとのマルチディスプレイ。
月の上部ラテラルアーク
1 回/年 以下
月のラテラルアークはとても暗いので、なかなか見つけることができません。タンジェントアークが明るく見えているときにラテラルアークがある付近をよく探すと見つかることがあります。
写真中央少し右下に見える、斜め方向の虹色の弧が下部ラテラルアーク
下部ラテラルアーク
Infralateral arc,ILA
3 回/年
太陽の下側、かなり離れたところに見られる大きな弧。
太陽高度が低いときは左右に分かれ、太陽に対して凸の緩やかな弧になりますが、太陽高度が高いときは、太陽に対し凹の一つの大きな弧になります。
太陽高度が低いときは低空にしか出現しないので、空気が澄んでいないと良く見えません。
そのためか上部ラテラルアークと比べて観察回数がぐっと少ないです。
飛行機から見た下部ラテラルアーク。太陽高度は約 30°。太陽に対し凸の緩やかな弧になっています。
ILA:下部ラテラルアーク、22°:22°ハロ、PH:幻日、LTA:下部タンジェントアーク。
通常画像・
シミュレート画像重ね合わせ
太陽高度約65°のときの下部ラテラルアーク。太陽の真下で環水平アークと重なり、環水平アークよりも太陽側に反った大きな弧となります。
ILA:下部ラテラルアーク、22°:22°ハロ、CH:外接ハロ、CHA:環水平アーク、PC:幻日環。
通常画像・
強調画像
太陽高度約 47°のときの下部ラテラルアーク。この高度では下部ラテラルアークは左右に分かれますが、左側のみビルの上にうっすらと見えています。明瞭なタンジェントアークや外接ハロ、幻日環が見えているときは下部ラテラルアークが出ていないかチェックするとよいと思います。
ILA:下部ラテラルアーク、22°:22°ハロ、CH:外接ハロ、PH:幻日、PC:幻日環。
通常画像・
強調&シミュレート画像
太陽高度約 30°のときの下部ラテラルアーク。下部ラテラルアークは左右に分かれ、明るく見える位置は高度15°前後と低くなります。したがって、低空まで空が澄んでいないとよく見えません。
ILA:下部ラテラルアーク、UTA:上部タンジェントアーク、PA:パリ—アーク、PH:幻日、PC:幻日環、120°PH:120°幻日。
通常画像・
強調&シミュレート画像
澄んでいない空では、高く登らない下部ラテラルアークはかすんでしまうので、なれないと見逃すことになります。
タンジェントアークがハッキリと見えるときは、太陽から50度ほど離れた場所をよく探すと見つかるかもしれません。
下部ラテラルアークの 360°画像(別窓で開きます[google photo)。
非常に鮮やかに見られた外接ハロで、22°ハロ、幻日環、外接ハロも一緒に見えています。
月の下部ラテラルアーク
1 回以下/年
まだ一度しか見たことがありません。タンジェントアークが良く見えているとき、出現位置をよく探すと見つかることがあるでしょう。
■c軸垂直■
太陽の真上にある、太陽に凸の虹色の弧が環天頂アーク
環天頂アーク
circumzenithal arc
20 回/年
太陽高度が低い(おおよそ32°以下)ときに、空高くに見える鮮やかな虹色の弧。別名逆さ虹。
22°ハロや幻日、タンジェントアークに比べ、非常に鮮やかな虹色がつくことがあり、見られるとうれしい大気光学現象です。虹色が綺麗につく理由は、環天頂アークを見せる氷晶の姿勢と光の経路が、90プリズムとして安定する(同じ方角に見える光は、ほぼ同じ氷晶姿勢と光の経路で屈折してくる)ためです。環水平アークも同様な理由で鮮やかな虹色がつくことがあります。
太陽高度約 19°の時の環天頂アーク(チェンジ後は左半分が高度を入れたシミュレート画像)。
環天頂アークはおよそ 64°の高さにあり、かなり見上げないと見つけることができません。
通常画像・
シミュレート画像
太陽高度約 27°の時の環天頂アーク(VR画像)。環天頂アークの高度は 72~73°にあり見上げなければ見逃す位置です。全天写真(等距離射影や等立体角射影)を撮ると、天頂を中心とした円弧になっていることが分かりやすいです。
VR画像で、環天頂アークを見上げてみてください。間隔をつかめば本物を見逃すことがなくなると思います。
下に凸のアークが環天頂アーク、上に凸の大きなアークは上部ラテラルアーク。太陽は写真下方にあります。
環天頂アークと上部ラテラルアークは太陽の真上で接します。
環天頂アークと幻日、陽柱とのマルチディスプレイ。この 3 つの現象は、いずれも同じような氷晶と姿勢で見られる可能性があり、運が良いと同時に見ることができます。
鮮やかに分光した環天頂アーク。氷晶が安定して浮いているほど虹色は鮮やかになり、黄色がはっきり見えます。逆に不安定な時は青—白(薄緑)—赤というように見えます。
穴あき雲と環天頂アーク。穴あき雲から落下する氷晶(尾流雲)により作られた環天頂アークです。
月の環天頂アーク
1 回/年 以下
星空を背景に虹が出る姿はとても美しいように思いますが、残念ながら肉眼では虹色が良く見えません。
雲と一緒に動かないことで、やっとその存在がわかる程度でした。
通常画像・
強調画像・
地平線と平行に見える大きな虹色の弧が環水平アーク。下部ラテラルアークも重なっている。
環水平アーク
circumhorizon arc
15 回/年
太陽高度が高い(おおむね 58°、実際の観察では 60°程度以上)とき、太陽の下方に現れることがある大きな虹色の弧です。
夏至を中心に 4〜8 月が観察のチャンスとなります。
環天頂アークと並んで非常に鮮やかな虹色がつくことがあります。
弧全体が同じ高度となることから水平という名がついているようですが、天球への投影で上方に沿った弧に見えます。
見える太陽高度の範囲から、環天頂アークと同時に見えることはありません。
22°ハロと環水平アークのマルチディスプレイ。環水平アークは非常に長く伸びることがあり、全体を 1 枚の写真に収めるには超広角レンズや魚眼レンズが必要です。
尾流雲に出現した環水平アーク。小さな雲など断片的に出現すると彩雲のように見えることがありますが、環水平アークは太陽に近い側が赤で、虹と同じ順番に色着くので、色の付き方が雲の形に影響を受けやすい彩雲と容易に判別できます。
綺麗な虹色となった環水平アーク。太陽は写真上方にあり、太陽側が赤色となります。
月の環水平アーク
1 回/年 以下
月の環水平アークは、太陽と同様に月が高く上る時期が観察のチャンスとなります。満月のころ明るく見えるチャンスがあることになるので、太陽と反対に冬至を中心として10〜2月がチャンスとなると思います。しかしながら私は一度しか見たことがありません。
←大犬座(一番明るい星が大犬座のシリウス)を横切るように出現した環水平アーク。肉眼では虹色がわかりませんでしたが、水平に薄く光っていることを目視で確認することができました。
反射と屈折
■c軸水平■
太陽を通る白い円が幻日環
幻日環
Parhelic Circle,PC
4 回/年
幻日環は太陽を通る白い円(円周上に太陽がある。22°ハロは中心に太陽。)です。その中心は必ず天頂で円周は地平線と平行になります。
したがって、太陽高度が低いときはとても大きな環に、太陽高度が高いときは小さな輪になります。
夏至近くで太陽高度が 68°を超えると、22°ハロよりも小さくなります。
幻日環を見せる簡単な光の経路としては、地面に対し垂直な結晶面表面での反射があります。
底面でも柱面でも構わないので、板状氷晶が c 軸を垂直にして浮いていても、柱状氷晶が c 軸を水平にして浮いていても見える可能性があります。
必ずではありませんが、幻日や120°幻日が一緒に見られれば板状氷晶が、タンジェントアークが一緒に見られれば柱状氷晶が、それぞれメインとなっていると思われます。
←太陽高度 54°のときの幻日環。直径は 72° (( 90-54 ) × 2) になり、対角魚眼レンズでやっと収まる大きな環となります。
はっきりしませんが 22°ハロと外接ハロとのマルチディスプレイになっています。
通常画像・
シミュレート画像
←太陽高度約 74°のときの幻日環
直径は 32°となるので、直径 44°の22°ハロよりも小さくなります。PC:幻日環、CH:外接ハロ、CHR:環水平アーク、ILA:下部ラテラルアーク。
通常画像・
強調画像
上部タンジェントアーク(UTA)を伴う幻日環(PC)。柱状氷晶が中心とみられます。
通常画像・
強調画像
太陽高度約 78°のときの幻日環。うっすら見えている 22°ハロと同じ大きさになっています。
通常画像・
シミュレート画像
飛行機雲に作られた幻日環です。写真一枚では飛行機雲の一部だけが明るくなっている状態なので、目視観察ではわからなかったかもしれません。左の写真は動画から20秒間隔のコマを比較明合成したもので、飛行機雲は右から左へ流されています。写真下半分は飛行機雲がなく幻日環もありません。
月の幻日環 = 幻月環
1 回/年 以下
月の 22°ハロ(外接ハロの可能性もあります)とともにうっすらと見えた幻月環です。月の高度は 70°あり、幻日環の半径は 20°で一緒に見えている 22°ハロより少し小さくなっています。
幻日環を横切る大きな弧がウェーゲナーアーク。通常画像ではほとんど見えない。
ウェーゲナーアーク
Wegener arc
1 回/年 未満
22°ハロ&外接ハロから天頂を回り込みながら幻日環を横切る大きな弧。右強調写真では WA と注釈しています。太陽と天頂を通るラインを対象として 2 本できますが、写真では片方しかよく見えません。
タンジェントアーク・外接ハロがくっきりと見えているときに見えることがあります。
私の観察では二十面体氷晶による光象を上回るレア現象ですが、光の作られ方の分類上ここに置きます。
幻日環と外接ハロがはっきりと見えているので、板状氷晶ではなく柱状氷晶が浮いているとみられ、整った六角柱であればウェーゲナーアークが出現しているかもしれない、という流れで観察しています。
青空ではなく白く見える空(巻層雲が厚い、薄い高層雲が手前にある、など)では、淡い光のウェーゲナーアークは背景との輝度比が低く、見えずらいと思います。
■c軸垂直■
中央の白いスポットが 120°幻日。上にカーブしている弧は幻日環。
120°幻日
120°Parhelia
1 回/年
太陽から方位で 120°離れた場所 2 箇所出現するスポット。
太陽と同じ高度に現れるので、必ず幻日環の上に見られます。
120°幻日が見られるときは幻日環も一緒に見られる可能性が高いと思います。
←120°幻日と幻日環。雲の濃淡などによって幻日環の明るさにムラがあるとがあり、120°幻日を幻日環の明るい部分と見間違う可能性があります。120°幻日の出現位置は太陽から 120°離れた場所に固定されているので、しばらく観察を続ければ動きから判別可能です。
太陽と 2 つの 120°幻日を一枚の写真に収めたものです。
太陽と 120°幻日がお互いに方位で 120°離れていることがわかります。
通常画像・
シミュレート画像
小さな雲に見られた 120°幻日です。白いスポットは雲の明るい場所と見間違えやすいですが、注意深く見れば雲と一緒に動かないことから判別できることがあります。
通常画像・
シミュレート画像
月の120°幻日 = 120°幻月
見たことがありません
太陽柱
Sun Pillar,SP
9 回/年
日の出や日の入りの前後、太陽から垂直に伸びる光の筋。
太陽高度が低いほど長く伸びるようになり、地平線下に太陽がある日の出前や日没後にもみえます。
板状氷晶が c 軸を大体垂直方向にむけて浮いているときに、(主に)「底面で太陽光が反射する」ことで作られることがあります。
(骸晶構造のような)表面の凹凸や内部の気泡で、視線方向に光を反射する面の方向がそれなりにそろっていれば太陽柱を作ると想像されます。
実際、タンジェントアークが良く見えるとき(柱状氷晶)でもみられることがあります。
太陽が沈む前なら、上下両方に伸びた太陽柱がみられることがあります。太陽が雲にちょうど隠されていると目視でも比較的安全に観察できます。
太陽柱と幻日のマルチディスプレイ。この二つはどちらも板状氷晶で c 軸が垂直方向にある程度そろっている状況で見えることがあるので、
マルチディルプレイのチャンスがあります。
日没後の太陽注。上空には層状に広がり始めた高積雲(水滴雲)がありましたが、太陽柱がはっきりとみられたことから、
高積雲から尾流雲(氷晶)が落ちていたと推定されます。
22°ハロ・上部タンジェントアーク・太陽柱とのマルチディスプレイ。
幻日とのマルチディスプレイは前述のとおり氷晶の姿勢が似ているので起こると考えやすいですが、上部タンジェントアークがはっきり見えるときにも太陽柱が見えることがあります。
同時に薄く幻日が見えているので、太陽柱を見せる氷晶の姿勢は c 軸垂直のものもあるのでしょうけれど、c 軸を水平方向してに浮いている、骸晶構造を持つ柱状氷晶で太陽柱が作られているのかもしれません。
太陽柱と幻日・環天頂アークのマルチディスプレイ。この 3 つは同じような氷晶の形と姿勢で見られることがあるものですが、実際に 3 つ同時にみられるのは珍しいです。
太陽高度が高いときの太陽柱?
太陽高度は約 22°あり、シミュレートでは短い太陽柱が再現されます。
氷晶にあたって出た光が、一定の確率で別の氷晶に再び当たるという条件でシミュレートすると、
細長い楕円形(丸みのあるひし形)の太陽柱を再現できます。ただし、実際にそのようになってるかはわかりません。
光環と同じような物理でみられるのかもしれません。
月の太陽柱 = 月柱
Moon Pillar
1〜2 回/年
月に見られる太陽柱は月柱と呼ばれます。縦に細長く伸びる月の光はとても幻想的です。左の写真は上弦のころの月に見られた月柱です。
←うっすらと伸びた月柱。月の高度は約 13°と高いのであまり長くは伸びませんでした。
月の左上にある明るい星は木星で、木星の光も縦に伸びています(木星柱)。
金星の太陽柱 = 金星柱
Venus Pillar
明るい金星に伸びる太陽柱はビーナスピラーと呼ばれ、それは美しい現象です。肉眼でも縦に伸びた金星の姿を確認することができます。
←夕方、まだ薄明が残る空に見られた金星柱。濃い青の空に金色の光の柱が美しく見えました。
星の太陽柱 = 星柱
Star Pillar
肉眼ではわかりませんが、巻層雲などの薄い雲が出ているときに、低い空に見える明るい星を撮影すると星柱が見えていることがあります。
右の写真はみかけの明るさが一番明るい恒星シリウスに見られた星柱です。
←アンタレスにみられた星柱です。シリウスの写真にも当てはまりますが、どちらも柱というよりは細長い楕円形の光になっています。純粋に屈折・反射だけで作られているわけではないと思われます。
人工の光の太陽柱 = 光柱
Light Pillar
月柱が見えているとき、うっすらとみられた光柱(3 組の矢印の間に見える細長い光)です。光源は地上≒高度 0°にありますから、柱は長く伸びます。漁火のように明るい光源があればもっとはっきりと見えると思いますが、いまだそのチャンスに恵まれていません。
映日
Sub Sun,SS
(私の場合)飛行機からの観察のみ
地平線下に見える明るいスポット。氷晶が地表に置かれた鏡のような役割を果たすことで見られ、地平線を対象軸として太陽の対称位置に見られます。
私の観察環境では飛行機からしか観察することができません。角板氷晶が c 軸を大体垂直に向けて浮いているとき(反射面は底面となります)に見られることがあります。
原理上は、日没後に地平線上に見えるのですが、実際に見えるか観察をしているところです。
板状氷晶が非常に安定した状態で雲底にないと、太陽柱と区別できないように思います。
逆に言えば、日没後の太陽柱は(光の経路の上では)映日といえる部分もあります。
太陽のある方向の、太陽高度と同じだけ見下ろした場所に出現するので、映日を観察しようと思うときは必ず太陽がある窓側の席に座ります。太陽があまり高く上っていない時間帯の方が観察が容易です。
→
飛行機からの眺め。太陽高度は約 8 度で、映日が 22°ハロの中に見えています。
映日と太陽は、太陽高度の 2 倍の角度離れて見えるものなので、太陽を中心とした半径約 22°の位置にできる 22°ハロの中に映日が見える、というわけです。
映日(SS)と映幻日(SPH)。太陽高度は約 12°です。氷晶の反射面が完全に水平であれば、太陽の形がそのまま映り円形になりますが、実際は水平から少しばらついて浮いているので、縦に細長く見えるようになります。
通常画像・
シミュレート画像
はっきりと太陽の形が映った映日。氷晶の姿勢が非常に安定していると、ほとんど縦に伸びず楕円形の映日になります。
飛行機が尾流雲の中を通過した時、ダイヤモンドダスト現象とともに映日が見られました。
これを雲の上から見ると小さな氷晶のきらめきが目視ではわからなくなり、普通の映日となります。
動画は youtube↓ で。
月の映日 = 映月
見たことがありません
あまり飛行機に乗らないので、月が適度な高度にある、かつ、月齢が適度に満月に近い、かつ、ちょうど良い方向へ飛行機が飛んでいる、というタイミングに合ったことがありません。
映幻日→
映日
映幻日
Sub Parhelia
(私は)飛行機からの観察のみ
幻日と同じ光の経路(柱面から入射→一つ離れた柱面から射出)の途中、氷晶内部で奇数回底面で反射した光が作り出します。映日と同じ高度(地平線下)に見られるので、私の観察環境では飛行機からの観察のみになります。幻日と同じく、内側(映日側)が赤色に色づいて見えます。
太陽高度が低いときに映日が見られたときは、映日から 20°(開いた親指と人差し指の指先距離くらい)ほど水平方向に離れた場所を探してみるとみつかることがあります。
映幻日(SPH)と映日(SS)。幻日と同じく映日の左右に一つづつ見えることがあります。白一色の映日に対し、映幻日は少し虹色がつきます。
通常画像・
シミュレート画像
同じ映幻日と映日の 3D 写真。上二組が交差法、下二組が平行法です。雲までの距離に対し無限遠といえる太陽の反射像なので、映幻日も映日も無限遠(雲より遠く)にあるように見えます。
月の映幻日 = 映幻月
見たことがありません
珍しい現象
六角柱以外の氷晶によるもの、(私が)よくわかっていない、特殊な形状の氷晶によるものを珍しい現象に分けています。
観察頻度としては1年に1回程度かそれ以下です。天文位置+現象的に起きにくいもの(例えば月の下部ラテラルアーク)はここに含みません。
■二十面体氷晶によるもの■
9°ハロ・18°ハロ・24°ハロ
9°Halo・18°Halo・24°Halo
二十面体氷晶
よく見られる氷晶による大気光学現象は六角柱の氷晶によって作られますが、小さな氷晶では六角柱の底面と柱面の間にピラミッド面と呼ばれる結晶面ができることがあります。2 面ある底面の周りにそれぞれ 6 面で 12 面のピラミッド面ができ、左上の絵のような合計 20 の結晶面がある二十面体氷晶となります。
球に近い形の二十面体氷晶がいろいろな方向を向いて浮いていると、六角柱の氷晶に比べて多くの組み合わせで光が屈折することから、いろいろな大きさ(角度)のハロが作られます。右上の写真は肉眼ではっきり確認できた 9°ハロ、18°ハロ、24°ハロです。下の写真は強調したものにシミュレート結果を合わせたもので、それぞれ半径が 9°、18°、24°になっているのがわかると思います。
理想的な二十面体氷晶によるハロ(左半分)と拡散を受けた見え方(右下)
理想的な二十面体氷晶では、9°・18°・20°・22°・23°・24°・35°・46°のハロが見えるのですが、
氷晶自体の光の拡散(ミー散乱など)が加わるので、22°・23°・24°は区別が困難で一つのハロにも見えやすいですし、
20°ハロは 18°ハロの広がりに重なってコントラストが弱くなるようです。
35°ハロと46°ハロはほかのハロに比べて光が分散して見えにくいようです。
以上は理想的なシミュレートからの推測ですので、実際の見え方の参考になるかは分かりません。
明瞭な9°ハロと18°ハロはかなりのレア現象です。右の写真は私の約 8 年間の観察の中で最も明瞭に見られたものです。特に 18°ハロが明るく見えたのはこの日一度きりです。
内側から 9°ハロ、18°ハロ、24°ハロ
明瞭な 9°ハロ
←9°ハロ、22°ハロ、幻日(強調&シミュレート画像の合成)。二十面体氷晶は六角柱の氷晶と同じ結晶面も持っていますから、同じように幻日や 22°ハロを見せることができます。9°ハロは、それを作る結晶面の位置関係から一番明るく出やすいのですが、それでも薄いものです。
わずかに見えた 9°ハロと、ぼんやりとした 22°ハロ+24°ハロ。24°ハロは 22°ハロと大きさが似ているので、一見 22°ハロと同じように見えます。しかしながら、輪郭があまりはっきりしないことと、9°ハロを伴うことから、24°ハロではないかと疑って観察できますし、あとで写真判定で確定できます。
通常画像
強調画像
右の写真から少し時間が経過した時のもの。クリックで強調+シミュレート画像になります。9°ハロのほか、18°ハロも一部見えています。22°ハロが一番明るいようですが、24°ハロも混じっています。
通常画像
強調&シミュレート画像
9°ハロと22°ハロの強調画像。
左の写真の通常画像とシミュレート画像。9°ハロが目視できたとはいえ、かなりコントラストが低く、一見 22°ハロだけにも見えます。
この日、タイムラプス動画も撮ったのですが、9°ハロは太陽のハローに埋もれてよくわかりませんでした。
月の 9°ハロ
9°halo
1 回/年 以下
太陽の 9°ハロがレア現象なのですが、月の 9°ハロとなるとさらにレアです。まだ 1 回しか見たことがありません。
その 1 回が観察された 2017 年 8 月は、太陽の 9°ハロが 2 回観察されました。奇跡の 8 月でした。
タイムラプス動画。9°ハロのほか、22°ハロ、幻月がハッキリと見え、パリ—アークがわずかな時間見えています。幻月環ははっきりしません。
左の動画を強調したもの。9°ハロがあることがハッキリと確認できます。
月が太陽よりもまぶしくないので、目をしっかりと夜空に慣らしておけば、実際に存在して写真に写るものは肉眼で見えます(肉眼で確認できるからこそ写真に撮るのですが、肉眼で見えないものも写してしまうのも写真です)。
9°column arc(太陽左側近くの縦方向の弧)と上部タンジェントアーク(UTA)・パリ—アーク(PA)。
通常画像・
強調画像
9° column arc
二十面体氷晶にも細長い角柱状のものと薄い角板状のものがあります。
そのうち、角柱状の二十面体氷晶が c 軸を水平方向に向けて浮いている(左の動画)ときに出現する
アーク形状の光象を pyramidal column arc(s) と呼びます。(破線部、勉強不足です)
9°の(最小)離隔で太陽の左右に出現する右写真のアークは 9°(pyramidal) column arc と呼ばれます。
c 軸を水平方向に向けて浮いている場合にみられるタンジェントアークは、柱面から入射し一つ間をあけた柱面から射出する 60°のプリズムで作られますが、
9°column arc は、ピラミッド面から入射、反対側のピラミッド面に隣接する柱面から射出する 28°のプリズムで作られます。
ランダムな姿勢であれば 9°ハロになりますが、姿勢が制限されるためアークとなるものです。
←非常に薄い現象でしたが、9°の位置あたりが明るくなっていること、パリ—アークがあることは肉眼で確認できました。
強調写真にすることで 9° column arc ということが分かりました。
強調画像・
強調&シミュレート画像
←肉眼では見えているものの、写真に撮るとレンズのハロー現象やゴースト現象により似たような光が入り、
紛らわしい像となることがあります。そこで、少しアングルを変えた写真を撮り、それぞれに写っていることで確度を高めます。
強調画像・
強調&シミュレート画像
←時間をおいて撮影した写真を重ね合わせることでも確認することができます。雲は流されていきますが、大気光学現象の方は太陽の動きに合わせるので、動きの違いで容易に判別することができるようになります。
太陽上方にかぶさるように見えるやや明るい弧が 23°upper parhelion。
23°parhelion
23° plate arc
ピラミッド面を持つ板状の氷晶が作り出す光象です。
アークの形になるものは pyramidal plate arc(s) と呼ぶのですが、幻日のように一つ面を置いた 2 面のプリズム(ピラミッド型氷晶の場合、例えば基底面から入射し隣接していないピラミッド面から射出するな経路)で作られるものを #°parhelion
(#には角度が入る、単数形 parheria)と呼びます。23°の(最小)離隔で太陽の上方に出現するので、23°upper parhelion とも呼ばれます。(破線部、勉強不足です)
太陽に対し凹の上部タンジェントアークのような弧をしていますが、何となくカーブの具合が違うなと感じていました。
18°ハロが良く見えていたので、もしかすると?とチェックすると 23°upper parhelion と分かりました。
幻日のように太陽を挟んで反対側に出現するものは 23°lower parhelion と呼ばれます。
強調画像。一番明るく見えるのが 23°upper parhelion。18°ハロの上下はかなり薄く、氷晶の向きがもう少し揃うと閉じなくなり、18° arc になります。
通常画像とシミュレート画像。23°lower parhelion の方は良くわかりません。また、9°ハロが見えていませんが、これは氷晶に柱面がほとんどない(14面体氷晶に近い)からではないかと思います。
23 plate arc→
太陽高度約 27°の時の 23° plate arc を含む光象の様子。22°ハロが太くなっているだけにも見えるので、18°ハロなどほかの光象がなければ気づきにくいと思います。
通常画像・
強調画像
23° plate arc 付近の拡大。22°ハロと 23° plate arc の間にはいくつかの経路で作られたハロが重なりますが、目視でも写真でも区別できません。
強調画像・
強調+シミュレート画像
←
→
太陽の左右にある集光の弱いスポット(矢印)が 18°parhelion もしくは 18° plate arc
18°parhelion
18°plate arc
ピラミッド面を持つ板状の氷晶が作り出す光象です。ランダムな姿勢から c 軸垂直な姿勢が卓越すると、18°ハロが途切れてアークになります。
またそのアーク部分に別の経路で届く18° plate arc が重なり幻日のように集中した光ができます。
最初の写真の強調画像とシミュレート画像。太陽高度は約 37°。9°ハロと「23°もしくは24°ハロ」の間にあります。23°plate arc、35°ハロも見えています。
左の写真と同日撮影で、太陽高度約 35°。目視でも 18°ハロになっていないことはわかりました。
ピラミッド型氷晶によるハロ現象のタイムラプス動画とシミュレート動画との比較。c 軸を鉛直方向にゆるく集中させて浮いているピラミッド型氷晶によるハロ現象のシミュレート(右下)と、
実際に見られた空(左上)です。目立つのは 23°upper parhelion( 23° plate arc ),18°parhelia,18°halo,22°・23°・24°halo(区別は困難)です。
短い時間帯で,上部タンジェントアーク,パリ―アーク,幻日が確認できます。実際の空は複雑で、さまざま形と姿勢で浮いている氷晶が作る光象をシミュレートで再現するのは困難です。
Bottlinger's Rings
映日の回りにできる小さな楕円形の光です。elliptical halo を見せていると考えられている氷晶と同じ氷晶で作られると考えられています。飛行機から非常に明瞭な映日を観察していたところに突然現れ、かなり明るかったということもあり大変驚きました。
←クリックで通常の映日との比較ができます。Bottlinger's Rings から通常の映日までに約 5 分経過しています。肉眼でリングに気が付いてから見えなくなるまではわずか 30秒ほどでした。
Bottlingers rings・
映日
←太陽を含めた、大気光象全体と雲の様子、クリックでシミュレート画像。太陽の周りには 22°ハロ、
下部タンジェントアーク、薄く幻日が見えていました。雲頂には映日のみはっきり見えていて映幻日はありませんでした。
通常画像・
シミュレート画像
(私が)確認出来ていない現象
elliptical halo ?
elliptical halo ?
太陽の周りに現れる小さな楕円形の光です。9°ハロとは明らかに大きさが異なり、円ではなく楕円形をしています。
elliptical halo(楕円形のハロ、楕円ハロ)と呼ばれる現象のようですが確証はありません。
elliptical halo は特別な形状の氷晶(非常に薄いピラミッド氷晶のような形)で作られると研究されています。
elliptical halo ?
拡大した写真。二重の楕円になっているように見えます。外側には光環のような色彩も見えます。
高積雲の周囲に(重力的に下方向に)広がった薄い雲に elliptical halo? 作られているようでした。
大きさのそろった氷晶が安定して浮いていると、氷晶の投影形状は重力的に上下方向を短径とした楕円形に近くなります。
このとき、もし光環ができるとしたら上下方向を長径とした楕円形になりそうです。太陽右方向には色のついた光環が同じような大きさで見えていますが、関係しているのかはわかりません。
elliptical halo ?
レンズ雲の上方に現れた elliptical halo?。
太陽の前を小さなレンズ雲が通過し、うまい具合に直射光をさえぎってくれています。
大きさは、短半径 3°ほど、長半径が 8°ほどです。
レンズ雲の通過に伴い形が変化しているので、雲の影が投影されているようにも見えますが、左右に対称性を保ったままです。
また、レンズ雲が小さく・薄くなっても見えていることから、雲の影ではないと考えられます。
レンズ雲が消滅していくに従い光が薄くなっていることから、
レンズ雲のすぐ近くにある何かがこの現象を作り出していると想像できます。
時系列。1 枚目(左)を基準に、26秒後、85秒後、126秒後、145秒後(右)。
彩雲と elliptical halo ?
太陽高度37°の時の elliptical halo ? 。
10°間隔で緯度経度線を入れると、上下方向の直径は 14°程度、水平方向の直径は 10°程度と読み取れます。
上方の高積雲の半透明雲に光環が見えていますが、それよりも小さいということがわかります。
露出を変えた撮影例。楕円形部分はかなり明るさのジャンプがあります。
上 2 枚から少し時間が経過したもの。下半分は千切れ雲に隠されています。
強調すると干渉色が付いています。この 4 枚は扁平な形状の花粉( or 氷晶 )による光環のようなものかもしれません。
←月に見られた elliptical halo のようなもの。動画にも撮りましたが、縦長で下側の方に偏った楕円形の光が見えていました。
←高積雲に隠された太陽の上方にみられた elliptical halo のようなもの。写真上方に見える高積雲/巻積雲と同じ構造が太陽近くまで広がっており、そこに見えています。ハロ部分は明瞭な雲にはなっていません。
←太陽高度が高いときの太陽柱?の現象と似ています。氷晶の形と姿勢を反映した光環のようなものかもしれません。
水滴等による大気光象
氷晶による大気光象の物理をちょっとだけ書いているので、水滴についても書こうとは思うのですが・・・
私のいい加減な解説を書くくらいなら観察結果を書くだけにしようと思います。
では、氷晶はなぜ書いた?という突っ込みは察してください。
屈折によるもの
虹
Rain Bow
14 回/年
雨粒で光が屈折・反射して作られる虹色。とても鮮やかな色がつくことがあり、とても綺麗な現象の一つだと思います。
太陽の反対側(自分の影で目の位置)を中心とした大きな円となります。地上ではアーチにしか見えませんが、飛行機からなら円形の虹を見ることができます。
私の住む場所では、大気光学現象の中でそれほど頻繁にみられるものではありません。
小さな雨雲の虹
小さな雨雲でも、ちょうど良い場所に雨を降らせてくれると虹が出ます。
赤い虹
日没近く、夕日に照らされてできる虹は、夕日の色を反映してオレンジ色や赤い色の虹になります。
飛行機から見た虹
雨雲の上からでも、雨に虹がかかっているところを見ることができます。
雪雲から虹
雪雲から地上までの間に雪から雨に変わり、雨に変わったところから地上までに虹がみられました。
ちなみに、自分のところにはみぞれが降っていました。
影絵の世界
自分のところには分厚い雨雲がかかってとても暗くなっていましたが、遠くの空は雲の切れ目から太陽が差して鮮やかな虹となりました。
月の虹 = 月虹
Moon Bow
1 回/年 以下
月の光でできる虹は月虹(げっこう)と呼ばれ、とても幻想的なものです。月の光は太陽の光に比べて弱いので、月虹が明るく見えることはなく肉眼では虹色がよくみえず白いアーチとして見えました。
←露出中に雷光が入り、夜の虹らしさが出ました。この日はとても風が強く、揺れる車内からの撮影となったために鮮明に撮ることはできませんでした。。
主虹と副虹
主虹:14 回/年 副虹:5 回/年
主虹は一番明るく鮮やかに出るものです。水滴内部へはいった光が 1 回だけ内部反射して出てきたものが主虹となります。
副虹は内部で 2 回反射した光で作られます。二つの虹が同時にみられ、しかもアーチがつながるのはかなり珍しいです。
干渉虹
主虹の内側にみられる虹色の繰り返しを干渉虹(過剰虹)と呼びます。雨粒の大きさがそろっていると鮮やかに見えることがあります。正確には虹色にはなっていません。内側ほど色数が減り、緑-紫の繰り返しに見えます。シャボン玉の膜が作る虹色と似ています(ただし、干渉するメカニズムは少し異なる)。
干渉虹
参考:シャボン玉の「干渉色」
白虹
White Bow
雨粒よりも小さな水滴でできている霧や雲によって作られる虹です。雨粒が作る虹とは異なり虹色がつかず白い虹となります。このことから白虹とも呼ばれます。これまでの観察況では、霧が晴れてくる段階で霧に切れ目があって、太陽光が霧を通さずに霧に直接あたる場合に見られています。朝霧が晴れてくる時間帯がチャンス、という感じです。
霧虹
Fog Bow
1 回/年程度
霧が作る虹です。濃い霧の時よりも霧が晴れる段階で、ある程度太陽の光が霧で散乱されなくなったときの方が見えるようです。
霧虹が見えているとき、自分の立っている場所の上空は霧が薄く青空となっています。太陽の光が強く霧に当たることから、霧虹がはっきりと見えるようになったと考えられます。濃い霧に包まれたときは霧虹を見たことがありません。
朝霧と霧虹の全天タイムラプス動画です。霧が晴れる少し前、太陽が霧の層の上に顔を出すとともに霧虹が見える様子が見て取れます。
雲虹
Cloud Bow
(私の観察状況では)飛行機からの観察のみ
雲粒によって作られる虹です。飛行機から層積雲などの水滴の雲を見下ろした時に見えることがあります。
写真は 3D(平行法)です。雲は視差により奥行きがついて見えますが、雲虹は視差がほぼゼロなので無限遠となり、雲の向こうにあるように見えます。
干渉・回折によるもの
光環
見え方で定義できず
太陽のすぐ近くに作られる多重の虹色の環で、時にとても鮮やかな虹色になります。雲粒のサイズが小さいほど光環の半径は大きくなります。
雲粒のサイズが均一であれば円形に、不均一だと円から外れ、楕円形になったり凹凸のある円になったりします。
光の回折現象によって作られるもので、雨粒で作られる虹の虹色とも、環天頂アークのような氷晶による屈折で作られる虹色とも違います。
太陽のすぐそばに出現するので、観察するときは太陽を直接見ないように注意して下さい。自動車のガラスや水たまりなどに反射させると観察しやすいです。
花粉光環
光環現象は”サイズがそろった小さな粒子”による回折等によって作られる現象なので、花粉でも作られることがあります。
有名なのは杉花粉による花粉光環です。
私の自宅は海岸そばで海風が吹きやすく、スギ林ははるかかなたにしかないためか、
自宅から杉花粉による光環を見たことがありません。右の写真は春の高崎市で撮影したもの。私は花粉センサーを持っていない(花粉症ではない)ので、
花粉光環が出ているか否かが花粉センサー代わりとなっています。
月の光環 = 月光環
見え方で定義できず
月の光で作られる光環です。目視で見やすい明るさなので、太陽の光環より見つけやすいように思います。ただし弱い光での虹色なので、満月に近くてよく分光しているときでないと、目視では紫あたりから外側はよく見えません。
観察していてよく見かけるのは、満月よりも半径(内側の白から赤に変わる当たり)がかなり大きい光環(下の写真)なのですが、薄雲がかかった三日月を観察していたら半径の小さい光環があることに気が付きました。
金星光環
夜空で月の次に明るい金星は、一部の大気光象がみられるかも?と注目しています。
三日月に半径の小さい光環があることに気が付いたので金星にもあるかもと露出を調整して撮影すると、同じように色付く光環がありました。
彩雲
見え方で定義できず
雲全体もしくは端だけ特徴のある色合いになった雲です。光環との見え方の区別はあいまいで、光環から彩雲がつながっているようにも見えます。
光環と彩雲は、雲粒のサイズと太陽(月)からの距離によって付く色がおおむね決まるのですが、光環は太陽(月)からの距離が支配的なのに対し、彩雲は雲の形のほうが支配的と考えて区別しています。しかし区別に明確な境界線はなく、なんとなく区別です。
飛行機雲の彩雲
出来たばかりの飛行機雲、つまり飛行機のすぐ後ろの飛行機雲が彩雲になることが時々にあります。
飛行機のすぐ後ろで、雲粒がサイズをそろえて大きくなっていくと彩雲になると思われます。
月の彩雲
見え方で定義できず
月の光による彩雲です。光環よりは彩雲のほうが光源よりも遠くに見られる(繰り返しますが、距離による区別はないです)ので、光環より暗い傾向があります。
暗いところでは色の判別がしにくくなるので、月の彩雲は月光環に比べて見つけづらいです。
光輪
(私の観察環境では)飛行機からの観察のみ
太陽と正反対方向、つまり自分の影の目に当たる位置を中心とした虹色の環です。サイズがそろった雲粒のとき色鮮やかな光輪になるようです。
月の光輪 = 月光輪
見たことがありません
それほど多くない飛行機の旅で、たった一度だけ月夜のフライトがあって、うまい具合に高積雲が目下に広がっていたのですが、月高度が高すぎて光輪方向を窓からのぞくことができなかったのでした。残念。
大気そのものの屈折等による大気光象
温度差による屈折
上位蜃気楼
?
地表/海面近くに冷たい空気、その上空に暖かい空気があるとき、上位蜃気楼がみられることがあります。冷たい空気のほうが暖かい空気よりも屈折率が高く光の速度が遅くなるので、冷たい空気側へ光が曲げられます。すると、地平線/水平線の向こう側の景色が見えたり、地表/海面近くのものが上空に見えたりするので、不思議な光景が作られます。
日本海に浮かぶ粟島方向に現れた上位蜃気楼の様子です。時間とともに形が変化する様子がわかると思います。
下位蜃気楼
?
地表/海面近くに暖かい空気、その上空に冷たい空気があるとき、下位蜃気楼がみられることがあります。
空気の温度状況が上位蜃気楼と逆の状態で、地表/海面が鏡のように空や高い構造物を映しこむように見えます。
だるま夕日
下位蜃気楼がみられるときの日没時、太陽とその下位蜃気楼の像がつながり、夕日が「達磨」のように見える現象です。
グリーンフラッシュ
大気に温度成層構造を持っていてプリズムのように働いているとき、太陽の縁(主に上方)に出現することがあります。大気の揺らぎに合わせて形も色も変化するのですが、千切れるような形の変化をするときに緑色が良く見えます。
日没直前では、黄色やオレンジ色の太陽本体の光が隠されるので、より一層緑色が目立ちます。緑色に加えて青色も見えることがあります。地平線近くまで鮮やかな青空が広がっていた日の日没時は、グリーンフラッシュの観察のチャンスです。
大気散乱等による大気光象
ミー散乱等
薄明光線
見え方で定義できず
雲の隙間等から漏れた太陽(月)の光が、空気中に漂う細かなチリなどによって散乱し目に届いたものです。太陽(月)を消失点とした光の筋となります。
月の薄明光線
見え方で定義できず
月の薄明光線は目視ではわかりにくいのですが、写真には写せます。美しいものが出ているかも?とカメラを向けるのは難しいのですが・・・。
反薄明光線
見え方で定義できず
反薄明光線は太陽(月)の反対方向に集中するように見える光の筋です。太陽(月)の高度が低いときに見えやすいです(というより、ある程度低くなければ見えません)。
薄明光線は太陽(月)を消失点とした光の筋なのですが、それが自分の影の方向まで追っていける方向まで伸びていれば、反薄明光線になります。無限に伸びる 2 本の平行線の間に自分が立った様子を想像してみましょう。
地上から日中に観察すると、左の写真の通り消失点は地平線下です。右の写真は日没直後で、地平線が見渡せる場所にいれば消失点が見えるかもしれない時刻での撮影ですが、隠れてしまっています。
雪結晶・霜結晶
グラウンド・ハロ
晴れて放射冷却が強く働いているとき、地表に積もった雪結晶に霜が成長することがあります。
霜結晶の六角柱の一部が空に浮かぶ氷晶と同じようにプリズムの役目を果たし、大気光象と同じようにハロ現象を作り出すことがあります。
よく晴れた日に雪面が鮮やかな虹色にキラキラ輝くことがあります。この光は、氷がプリズムとして働いて作られるものと、干渉膜として働いて作られるものがあります。雪結晶がプリズムとなるほど十分な厚みを持つと、キラキラがハロの位置に集中するようになってグラウンドハロを作ることがあります。
よく晴れた日に見られることがある雪面の鮮やかな虹色のキラキラ。
降霜があった朝に観察した、夜間に降った雪結晶。角板状の枝先が厚みを増して六角柱となっています。
46°ハロ
?
廃校となったグラウンドの雪原に見られた 46°ハロです。観察は朝から青空が広がり、雪面には雪結晶の形が残る新雪が積もっていました。虹色に光る雪結晶によるキラキラを眺めていると、そのキラキラする場所が自分についてくるように動くのに気が付き、これはグラウンドハロ!と観察をしました。
観察していると、たまたま空に巻層雲が広がり始め、22°ハロが出現しました。もう少し太陽高度が低ければ、もしかすると雪面にも 22°ハロが出現し、空の22度ハロとつながったかもしれません。
巻層雲に出現している 22°ハロは人間の目の解像度を超える数の光点で作られている(氷晶を分離してみることができない)のに対し、雪面の 46°ハロは光点を個別に見ることができます。
雪面は空よりも輝度が高いので、雪面のみ輝度を抑えた画像。チェンジ後はシミュレート画像との重ね合わせ。
空の 22°ハロと雪面の 46°ハロの位置関係に注目です。
同日の雪面にあった雪結晶の拡大写真。結晶面がきれいに作られていて、太陽光を鏡面反射していました。プリズムとして働いて輝いている雪結晶を撮影していなかったのが心残りです。
雪面を歩いて撮影した動画です。歩いて前進しても立ったりしゃがんだりしても、太陽に対するハロの見える位置は変わりません。